2009年2月号掲載 君塚良一監督×佐藤浩市

映画を見た後に、感じたり考えたりするきっかけになってくれたら嬉しいですね!

映画「誰も守ってくれない」


●まずは高知の印象から聞かせて下さい。

君塚良一監督(以下、君):食べ物が美味しいですね。鰹のタタキと鯨、うつぼのタタキを食べたんですが、美味しかったです! あと、「酔鯨」という高知の日本酒を飲んで酔ってしまいました(笑)

●佐藤さんは、高知は初めてなんですよね?
佐藤浩市(以下、佐):そうなんですよ。一度、大河ドラマで坂本龍馬を演じた事があるんですが、撮影が別の場所だったので。

●なるほど。では、映画についてのお話を。「容疑者家族の保護」をテーマにした作品ですが、どのようなメッセージが込められていますか?
君:作り手の僕も、佐藤さんのセリフも、何が良くて何が悪いとか「答え」を出してないんです。この作品のテーマはどんなに考えても答えが出るものじゃない。なので僕は、観客の皆さんに委ねようと思ったんです。だから、観客のみなさんが見終わった後に、考えたり話合ったりしてくれたら嬉しいなと思ってます。もちろん、加害者には責任があるけれど、その周りの家族も一緒に巻き込まれてしまうという事を、知っておいてもらいたかったですね。

●脚本の段階で、すでに佐藤さんのイメージがあったそうですが?
君:今回、もう一つのテーマとして「リアリティー」というのがあったんです。見てる人が、登場人物と一緒にその裏側を旅していけるようにしたかった。だから登場する刑事も、ヒーローではなくて現実感が欲しかった。不安があったりイライラしてたり... そういう所を、佐藤さんならリアルに演じてくれるんだろうなと思って。脚本も佐藤さんをイメージして書いたんです。

●佐藤さんが、最初に脚本を読まれた時の感想を聞かせて下さい。
佐:切り口というか、抱えているものの背景に決して結論がでるものじゃない。闇に向かってボールを投げるようなもので、どこに着地するか分からない。なので、どういう風に話を進めて行くんだろうと思いましたね。

●今回、実際に15才の志田未来さんと共演されていますが、彼女とのエピソードは何かありますか?
佐:役柄もあったので、撮影の時にはほとんど口を聞かなかったですよ。

●それは役作りでという事ですか?
佐:「役作り」という言葉は、僕が一番照れくさい言葉なんですよ(笑) そういう距離感でいた方が、お互いの役としてはいいんじゃないかと。最後に砂浜のシーンがあったんですが、そこでは彼女の表情も変わったし、そういうやり方で良かったと思います。

●最後に、読者にメッセージをお願いします。
君:今の日本の社会から目をそらさずに、でもメジャー映画として面白く作ろうと、佐藤さんと苦心して作った映画です。ぜひ、面白がって見てもらってその後、何か感じたり考えたりしてもらえればありがたいです。
佐:ラストに込められた決意、希望といった部分を、劇場で確認してもらいたいです。

 


映画情報/「誰も守ってくれない」

出演/佐藤浩市、志田未来、松田龍平、石田ゆりこ、佐々木蔵之介、佐野史郎、津田寛治、東貴博、木村佳乃、柳葉敏郎、他

STORY
東豊島署の刑事・勝浦と三島は、殺人事件の容疑者家族の保護を命じられる。一体何から守るのか分からないまま逮捕現場へ向かうと、そこには報道陣や野次馬達が容疑者の家を取り囲んでいた。勝浦は、15才の少女紗織の保護を任される。匿名の悪意、ネット上の掲示板の書き込みにより、次第に2人は追いつめられていく... 「踊る大捜査線 THE MOVIE」の君塚良一監督による、「容疑者家族の保護」をテーマに描いた社会派エンターテイメント。